「管理職に必要な能力ってなんだろう」と悩んでいませんか?
私も管理職になりたての時は、理学療法士としての知識や経験はそれなりにありましたが、管理職としては何を求められているのかわからない状態でした。
今回は、そんな理学療法士の方へ向けて管理職に必要な能力について解説していきます。
私も実際に、これから解説する管理職に必要な能力を学ぶことによって、ひとつの部署を任されるまで成長しました。
この記事を読むことで、管理職として何をしたらよいかわからないという疑問を解決でき、キャリアアップすることができますよ。
これから管理職として頑張りたいという理学療法士の方は、ぜひ参考にしてみてください。
理学療法士の管理職に必要な能力はリーダーシップとマネジメント
理学療法士の管理職に必要な能力は、大きく分けて以下の2つです。
- リーダーシップ
- マネジメント
ここからリーダーシップとマネジメントの詳細について解説していきましょう。
理学療法士の管理職に必要なリーダーシップ
リーダーシップとは
リーダーシップとはチームをまとめ、目標に向かって導いていく能力です。
理学療法士だからといって、リハビリを行うだけではありませんよね。
病院や施設には目標(理念や経営目標など)があって、それを達成するために日々取り組んでいるはずです。
具体的には、
- 患者様に質の高いリハビリを提供するために個々の知識・技術を向上する
- 経営のために一日に18単位以上介入する
といったような目標があるでしょう。
このような目標を達成するためには、個々やチームを引っ張る「統率者」が必要です。
そのために必要な能力が、リーダーシップなのです。
目標に向かってチームメンバーを導いていく力がリーダーシップなんだね!
リーダーシップの種類
リーダーシップには以下の4種類があります。
- 指示型
- コーチ型
- 参加型
- 委任型
これは、チームメンバーの発達度に合わせてリーダーの行動を使い分ける「SL理論」に基づいています。
具体的には、以下の図のようにチームメンバーの能力や意欲に応じて、リーダーシップを発揮していくのです。
この4つを使い分けることで、個人の能力に合わせたリーダーシップをとることができます。
理学療法士の管理職に必要なマネジメント
マネジメントとは
次にマネジメントについて解説していきます。
一般的にビジネスにおいてマネジメントは「経営管理」という意味で使われています。
具体的には、
人・物・金といった経営資源を効率的に活用し、経営の効果を最適化すること
これだけでは、ピンとこないと思うので、マネジメントの業務内容について解説していきます。
マネジメントの業務内容
マネジメント業務には大きく分けて以下の2つが挙げられます。
- 目標管理
- 人材育成
まず、目標管理の具体的な内容は以下のようなことが挙げられます。
- 目標設定
- 業務の振り分け
- 進捗確認
- 結果の評価
つまり、
- 自分の部署の目標を決める
- 目標を達成するための行動を決める
- チームメンバーに担当を振り分ける
- 定期的に進捗を確認する
- 実行状況から改善・課題発見を行う
- 目標の再設定
といった一連の流れを管理します。
病院や施設の規模にもよりますが、1年の目標設定とその成果を発表する場が設けられていることもあります。
私の勤務していた病院では、リハビリ部内で各部署の1年間の成果をPDCAでまとめて、発表する場がありました!
次に、人材育成の具体的な内容は以下のようなことが挙げられます。
- チームメンバー個人の目標設定管理評価
- 知識・技術習得支援
- モチベーション管理
人材育成は最も重要なマネジメント業務だと言えます。
なぜなら、管理職だけでは目標を達成することができないからです。
目標を設定するのは管理職でも、実際に行動してもらうのはチームメンバーです。
チームメンバーにしっかり行動してもらうには、
- 目標の共有
- 目標の動機付け
- 定期的な進捗確認
などが不可欠です。
また、チームメンバーの成長を促すことで、業務の質の向上や効率化を図ることができます。
そのため、理学療法士としてのスキルアップのみならず、
部署の目標を達成するために、リーダーを支援する人材を育てる
ということが、とても重要なのです。
しかし、チームメンバー個人の成長を、ただ促すだけではうまくいきません。
なぜなら、
人は気持ちが動かなければ行動できない
そのため、チームメンバーのモチベーションを管理することも人材育成の上では大切なのです。
リーダーシップ・マネジメントを発揮するために必要なスキル
リーダーシップ・マネジメントを発揮するために必要なスキルは、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
- 管理能力
- 社会人基礎力
- コミュニケーションスキル
管理能力
管理職なので当たり前ですが、管理能力はとても重要なスキルのひとつです。
マネジメントをうまく遂行するには、チームメンバーや業務・会議など、様々な事の状況・スケジュール等をしっかり把握しておかなければなりません。
また、リハビリ関係以外の書類管理も増えるでしょう。
そのため、一度にたくさんの人・業務について把握する管理能力が必要なのです。
社会人基礎力
社会人基礎力とは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱しました。
社会人基礎力は以下の3つ能力で構成されています。
- 前に踏み出す力
- 考え抜く力
- チームで働く力
そして、この3つの能力はさらに以下の12つの能力要素に分けられます。
この社会人基礎力は、社会と関わるすべての人に必要な能力ですが、管理職には特に必要とされる能力です。
一般職員と管理職の違いは社会人基礎力のレベルと言っても良いかもしれません。
社会人基礎力がどのような場面で必要になるのかと言うと、
- 前に踏み出す力:目標達成のため積極的に行動し、チームメンバーを巻き込みながら最後までやり遂げる
- 考え抜く力:自部署の課題を発見し改善のため行動目標を計画する
- チームで働く力:チームメンバーや他部署の人と連携を取り、円滑な関係性を築く
と言ったようなことが挙げられます。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは最も重要な能力と言っても過言ではありません。
なぜなら、
- チームメンバーの個性や能力を把握する
- 行動目標の進捗状況を確認する
- チームメンバーの成長を支援する
- 自部署の状況を報告する
- 他部署との連携を図る
といった管理業務は、しっかりコミュニケーションが取れなければ行うことができません。
また、円滑なコミュニケーションを図るには、相手と良好な関係を築く必要もあります。
誰しも嫌な人や苦手な人とは話がしづらいですよね。
そのため、コミュニケーションスキルの中には人間性も含まれるのです。
理学療法士がリーダーシップ・マネジメント力を高める方法
理学療法士がリーダーシップ・マネジメントに必要な3つのスキルを高めるには、以下のような方法があります。
- 管理能力:自分が行うべき管理をリストに挙げ可視化する
- 社会人基礎力:自分が得意・苦手な能力を把握する、スキルアップしたい能力についてPDCAを回す
- コミュニケーションスキル:コーチングスキルを理解する、コーチングスキルを何度も実践する、人間性を磨く
管理能力を高める方法
管理能力を高めるには、とにかく管理業務に慣れ、業務をきっちりこなすことが重要です。
そのためには、
自分が行うべき管理をリストに挙げ可視化
することが大切です。
リストは
- すべての業務
- 締め切りがある物
- 今日やること
など、細かく分けて作成して、定期的に確認しながら業務を行うことをおすすめします。
誰しも慣れないことやタスクが多いと、業務の抜けが出てしまうものです。
ましてや、リハビリ業務と並行して管理業務を行うなら尚更です。
しかし、管理職に業務の抜けが多いと、目標達成に支障が出たり、チームメンバーの評価が下がったりしてしまいます。
「○○さん、私が依頼したことまた忘れてる・・・。」
一般職の時に上司に対して、こんな風に思った経験はありませんか?
管理職はとにかくタスクが多くて忙しいのは事実ですが、チームメンバーに不信感を抱かせてしまっては元も子もありません。
そのため、リスト化した業務を確認しながらこなし、周囲の信頼も得ながら管理能力を高めていきましょう。
社会人基礎力を高める方法
社会人基礎力を高めるには、以下の方法が有効です。
- 自分が得意・苦手な能力を把握する
- スキルアップしたい能力についてPDCAを回す
社会人基礎力はたくさんの能力要素で構成されています。
そのため、まずは自分の得意・苦手な能力をしっかり把握することが重要です。
能力の把握には自己評価に加えて、上司などからの他者評価もあると良いでしょう。
評価を行うに当たっては、ラダーを用いると自分のレベルがわかりやすいでしょう。
自分の施設にラダーがなければ、他施設のラダーを参考にしてみてください。
そして、スキルアップしたい能力を決めたら、行動目標・計画を立案し、実際に実行していきます。
行動目標・計画は、
- 1週間に1つ部署の課題を見つける
- ○日までにチームメンバーに業務を振り分ける
- ○日のミーティング前に原稿を作って、わかりやすくプレゼンする
といったように、より具体的・達成条件が明確(数字を用いるなど)・期限付きで立案します。
実際に実行したら、評価を行い改善点もしくは新たな課題を見つけ、目標・計画の再設定を行います。
このPDCAの流れって普段行っている臨床に似てますよね?
自分の「社会人基礎力スキルアッププログラム」として課題発見・計画立案・実行・評価していくとわかりやすいですよ!
コミュニケーションスキルを高める方法
コミュニケーションスキルを高めるには以下の方法があります。
- コーチングスキルを理解する
- コーチングスキルを何度も実践する
- 人間性を磨く
コーチングスキルは引き出すコミュニケーションと呼ばれ、コミュニケーションスキルのひとつです。
コーチングスキルは、
「聞く」「質問する」「伝える」
これら3つのスキルを使い、相手から意見を引き出し、成長させます。
コーチングスキルを発揮することで、
- 自ら考えて行動できる人材を育てることができる
- チームメンバーのモチベーションをアップできる
といったような効果が期待できます。
私はコーチングを学んだことで、コミュニケーションに関する考え方やチームメンバーとの関わり方が劇的に変わりました。
コーチングをしっかり理解するには、まずは書籍を読むことをおすすめします。
ちなみに私が参考にしたのは以下の書籍です。
コーチングスキルの知識だけでなく、実践方法についてまで細かく解説してありますが、とてもわかりやすくてスラスラ読めました。
コーチングを理解するまでは、さほど難しいことではありません。
しかし、私も経験しましたが、実践するということがとても難しいのです。
実践スキルを高めるには、とにかくコーチングスキルを何度も実践することが大切です。
コーチングの本質は「質問」ではなく、「人間性」「信頼関係の構築」といったところにあります。
人間性を磨いたり、信頼関係を築くことが相手の心を開き、「自ら話してくれる」ということを引き出します。
最初はうまくいかなくても、たくさん自分磨きや実践を繰り返すことで、必ずチームメンバーの反応は変わってくるはずです。
管理職に向いている・向いていない理学療法士は?
ここまで管理職に必要な能力について知って、
「自分には管理職向いてないかも・・・。」
と思った方がいるかもしれません。
管理職だからと言って必ずしも
- 人を引っ張っていくのが得意
- 人前で話をすることが得意
である必要はないと思います。
私も元々は積極的にリーダーシップを取ったり、チームのムードメーカータイプではありません。
また、理学療法士になるために勉強して国家試験を受け、理学療法士として働いてきたので、経営や人材育成なんてことはひとつも知りませんでした。
でも私は管理職を経験してみて、「なんだかやりがいがあるかも」と感じました。
管理職に向いているかは、管理業務に「やりがい」を感じるかが重要だと私は思います。
以下の項目に当てはまる場合は、私と同じように理学療法士でも管理職に向いているかもしれません。
逆に以下の項目に当てはまる場合は、管理職に向いていないかもしれません。
理学療法士の管理職に必要な能力まとめ
本記事では、理学療法士の管理職に必要な能力やその高め方などについて解説してきました。
まとめると以下の通りです。
- 理学療法士の管理職に必要な能力はリーダーシップとマネジメント
- リーダーシップ:チームをまとめ、目標に向かって導いていく能力
- マネジメント:人・物・金といった経営資源を効率的に活用し、経営の効果を最適化すること
- マネジメントの業務内容には目標管理と人材育成がある
- 目標管理:自部署の課題を明確にし、改善のためにPDCAを回す
- 人材育成:チームメンバー個人の目標設定管理評価、知識・技術習得支援、モチベーション管理
- リーダーシップ・マネジメントに必要なスキルは管理能力、社会人基礎力、コミュニケーションスキル
- リーダーシップ・マネジメント力を高めるには以下の方法が有効
- 管理能力:自分が行うべき管理をリストに挙げ可視化する
- 社会人基礎力:自分が得意・苦手な能力を把握する、スキルアップしたい能力についてPDCAを回す
- コミュニケーションスキル:コーチングスキルを理解する、コーチングスキルを何度も実践する、人間性を磨く
- 理学療法士で管理職に向いているのは以下のような人
- 管理業務を自分のスキルアップとして考えられる
- 患者様によりよいサービスを提供するために施設のシステムを整えたい
- チームメンバーのフォローアップや育成に興味がある
理学療法士だけど管理職として頑張りたいと思っている方は、これを機にぜひリーダーシップとマネジメントへの理解を深め、実践してみてください。